比較した群間の
ベースラインは,FIMの認知項目以外は差がないと記載されていました.FIMの認知項目において刺激群が平均31.8(
標準偏差4.8),偽刺激が平均28.8(標準偏差4.6)の為,この群間差は臨床的に影響ないと判断します.患者とアウトカム評価者に対して
盲検化がなされています.
無作為化は,置換ブロック法を採用しておりました.
サンプルサイズは,群間差を0.95,差の標準偏差を1.0,検出力[→
検定力を参照]を80%,
有意水準を5%として計算すると各群19名が必要とされます.さらに,ドロップアウト[→
脱落を参照]を5%と見込んでいますので,19名の5%は0.95≒1となります.従って,各群19+1=20名を取り込んだということになるので,今回のサンプルサイズは妥当であると考えます.本研究では,脱落者が2名おりましたが
統計解析には含まれておりませんでした.統計解析は,ベースラインの群間比較には対応のないt検定[→
t検定(差の検定としての)を参照]および
Mann-WhitneyのU検定を用いておりました.rTMSの二群間の経時的な効果の分析には,
反復測定分散分析が用いられており,事後検定にはDunnett検定[→
Dunettの多重比較法を参照]とWilcoxonの順位和検定が用いられておりました.Bonferroniの不等式による補正[→
Bonferroniの調整(多重比較法)を参照]もされておりました.また,最終時点における二群間の比較に対応のないt検定が用いられていました.本研究の目的がrTMSの追加効果を検証する事と記載されているので,反復測定の
二元配置分散分析が適当と思われます.経時的変化の検証には有意水準の補正がなされていますが,最終時点における二群間の比較にそれがなされているかは不明です.したがって,統計解析方法は妥当でないと考えます.