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第30回目「左被殻出血後右片麻痺患者に対する課題指向的circuit trainingの効果」
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第30回 「左被殻出血後右片麻痺患者に対する課題指向的circuit trainingの効果」解説
竹川病院 櫻井 瑞紀
ステップ1.の解説:
PICO
の定式化
ステップ1の本文へ
臨床現場においてPatientは担当患者さんであり、
Outcome
も歩行能力など明確であることが多いのではないでしょうか。Interventionを選択する際に、臨床場面で単一の介入のみを実施するといったことは少ないという現状を考慮しました。回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者さんにおいて、退院が近づいてきた際のホームエクササイズ指導はとても重要であると感じています。また、昨今の感染拡大の状況もあり、非接触による運動療法の必要性も更に増してくると考えました。複数の運動を患者さんごとに組み合わせて実施することは臨床場面に即している介入であると考え、今回はIntervention にサーキットエクササイズ(トレーニング)を選択しました。
ステップ2.の解説: 検索文献
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circuit trainingはcircuit exercise やcircuit class therapyなどと表記されているものが見られたので、検索式にはcircuitのみを投入しました。その中で対象者数が多く、疾患や発症からの病日を見て回復期リハビリテーション病棟の対象に近い論文を選択しました。
今回の論文は脳卒中診療ガイドライン
1)
「2-2歩行障害に対するリハビリテーション」に記載されているメタアナリシス
2)
(エビデンスグレード1)の中にも採用されています。採用する判断の材料の1つになるかと思います。
ステップ3.の解説:検索文献の
批判的吟味
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脳卒中診療ガイドラインに用いられていることもあり、対象者数の
サンプルサイズ
の検定や対象者の選定のプロトコルも記載されています。無作為化比較試験[→
ランダム化比較試験(RCT)
を参照]で気を付けなければいけない
バイアス
の代表例は選択バイアスです。今回の対象者は、オランダの病院でリハビリテーションを実施した後の脳卒中者で単独歩行が可能なレベルを対象としています。FAC3以上とやや能力の幅が広いため、今回の治療対象にとって適応となる範囲がどの程度を想定しているのかに気を付ける必要があります。介入群とコントロール群で項目により
ベースライン
に差がみられています。施設ごとの盲検化[→
盲検法(ブラインディング)
を参照]を行っているので、施設による対象者の基本属性の差があることで結果にも影響を与える可能性も考慮しなくてはなりません。また、対面の治療では限界がありますが、対象者が介入群であるかコントロール群であるかを認識しやすい環境であったと推察されます。こちらについての統制については記載がなかったので、介入結果に影響を与えた可能性があります。
ステップ4.の解説:臨床適用の可能性
ステップ4の本文へ
前項でも述べた通り、比較的自立度の高い単独歩行が可能な方が対象となります。退院後の地域在住脳卒中者を対象としていますが、発症からの期間は両群とも90-100日程で、本邦では回復期リハビリテーション病棟に入棟している時期と大きな回復段階の差はないかもしれません。また、論文では転倒のインシデントが一定件数発生していますので、臨床適応する際は安全面への配慮が必要かと思われます。
上記の理由から、本症例は論文よりも歩行能力が低く転倒の危険も考えられました。失語症による課題遂行能力低下も疑われたため、課題難易度を低く設定し理学療法士管理下でのサーキットトレーニングとしました。
ステップ5.の解説:適用結果の分析
ステップ5の本文へ
論文の対象者は10m歩行で0.8-1.1m/sec、TUGで11-15sec程のパフォーマンスです。本症例は論文の対象者よりもパフォーマンスは低いですが、改善が確認されました。総介入時間においての差はさほど大きくありませんが、介入頻度は本症例の方が高いことが結果に影響している可能性があります。また、理学療法士管理下のため症例に対してより個人に適した課題設定や迅速な課題難易度の修正が実施されていた可能性があります。SIASの結果より運動麻痺の段階そのものの改善がみられていないことから、課題指向的な練習を反復することにより歩行パフォーマンスの改善に寄与したのではないかと推察されます。論文では12週後、24週後とフォローアップの測定をしていますが本症例ではできていません。改善した歩行パフォーマンスがその後も保持できているかについても検討の必要があります。また、実際の臨床場面においては退院後も生活期の理学療法や家族などの援助の下サーキットトレーニングを継続することにより身体機能維持向上が図れているかが重要になってくると思います。
参考文献
1) 脳卒中診療ガイドライン2015[追補2019] p292-294
2) French B, Thomas LH, Coupe J, McMahon NE, Connell L, Harrison J, et al.
Repetitive task training for improving functional ability after stroke. Cochrane
Database Syst Rev 2016; (11):CD006073.
ステップ1.の解説:PICOの定式化
ステップ2.の解説:検索文献
ステップ3.の解説:検索文献の批判的吟味
ステップ4.の解説:臨床適用の可能性
ステップ5.の解説:適用結果の分析
2020年11月26日掲載
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