検索式 | PubMedにてKeywords「chronic heart failure、endurance training、 resistance training、randomized study」、Limits「randomized controlled trial、published in the last 10 years」で検索した結果、7件ヒット。 7件の研究論文のうち本症例のPICOと合致した下記文献を採用。 |
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論文タイトル | Combined endurance-resistance training vs. endurance training in patients with chronic heart failure: a prospective randomized study |
著 者 | Beckers PJ, Denollet J, et al |
雑誌名 | European Heart Journal. 2008; 29: 1858-1866 |
目 的 | 慢性心不全患者を対象に有酸素運動のみと、有酸素運動に加えてレジスタンストレーニングを併用した運動療法による運動耐容能および四肢骨格筋力に対する効果を比較検討する |
研究デザイン | Randomized controlled trial(RCT) |
対 象 | 虚血性心筋症(ischemic cardiomyopathy: ICM)もしくは拡張型心筋症(DCM)による慢性心不全患者(LVEF≦40%、NYHAⅡ-Ⅲ)58名。 除外基準は、3か月以内に急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)発症または血行再建術をしたもの、移植待機例、定期的な運動療法の参加困難例、下肢の疼痛または末梢動脈疾患により運動制限があるもの、運動療法を妨げる脳血管、呼吸器または運動器疾患合併例、コントロールされていないもしくは運動誘発性不整脈の合併例とした。 対象者は、有酸素運動+レジスタンストレーニングの併用群(CT群)28例、有酸素運動単独群(ET群)30例の合計58例であった。 |
介 入 | 運動療法: ① 運動頻度 運動頻度は、週3回、6か月間実施 (1週間以上、運動療法を休止した症例は除外) ② 運動強度と反復回数 有酸素運動:嫌気性作業閾値時の心拍数の90% レジスタンストレーニング:開始時50%1RM、2か月後から60%1RM 反復回数:下記に示すように徐々に漸増 10回×1セット 15回×1セット 10回×2セット 15回×2セット ③ 運動療法プログラム ・有酸素運動単独群(ET群) ⅰ)開始~4か月:5種の運動機器(トレッドミル、自転車エルゴメータ、階段昇降、上肢エルゴメータ、 リカンベントエルゴメータ)を使用し、各々8分間の運動療法を実施 ⅱ)4~6か月:3種の運動機器を使用し、各々15分間の運動療法を実施 ・有酸素運動+レジスタンストレーニングの併用群(CT群) 9つの筋群(大腿四頭筋、大胸筋/小胸筋、広背筋、前鋸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、僧帽筋、 菱形筋)の各レジスタンストレーニングを施行 ⅰ)開始~2か月:有酸素運動10分間+レジスタンストレーニング40分 ⅱ)2~4か月:有酸素運動8分間×2回、レジスタンストレーニング30分 ⅲ)4~6か月:有酸素運動15分間×3回、レジスタンストレーニング(大腿四頭筋、大胸筋、前鋸筋、 広背筋)10分 |
主要評価項目 | ① 運動耐容能 :最大下運動負荷量(SSW)、最大下運動負荷時の心拍数 最高酸素摂取量(peakVO2)、最高心拍数、最高運動負荷量 ② 四肢骨格筋力 :1RMによる上肢筋力および下肢筋力評価 ③ 健康関連QOL :The health complaints scale (HCS)の下位尺度「cardiac symptom」 ④ 左室リモデリング:左室駆出率(LVEF)、左室拡張末期径/(LVEDD)収縮末期径(LVESD)、 N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT pro BNP) ⑤ 有害事象 :全死亡率、心血管イベントによる再入院(観察期間714±81.4日) |
結 果 | ① 運動耐容能 a.最大下運動負荷量(SSW):CT群がET群に比べて、有意に増加 (CT群 vs. ET群:39.3±14.6→64.1±16.8 vs. 51.4±13.4→67.0±14.6 watts; p<0.007) b.最大下定常運動負荷量と心拍数の比(HR/ SSW ratio):CT群がET群に比べて、有意に減少 (3.09±1.5→1.66±0.4 vs. 2.02±0.5→1.55±0.3; p=0.002) c.最高酸素摂取量(peakVO2)、最高運動負荷量(watts)、最高心拍数(bpm)およびVE vs. VCO2は 2群間で改善率に有意差を認めなかった。 ② 四肢骨格筋力 a.上肢筋力:CT群がET群に比べて、有意に増加した (27.3±11.7→40.5±14.5 vs. 39.2±11.6→44.9±11.8kg; p=0.003) b.下肢筋力:CT群とET群で有意差は認めなかった (29.5±15.5→42.3±16.9 vs.38.4±18.6→49.3±16.9kg;p=0.5) ③ 健康関連QOL cardiac symptoms:CT群がET群に比べて、有意に改善 (60% vs. 28%; OR3.85、95%CI 1.11-12.46, p=0.03) ④ 左室リモデリング LVEF :両群ともに有意に改善(CT群:25.8±6.9 vs. 28.5±9.7%;p=0.04、 ET 群:23.4±9.4 vs. 29.0±13.5%;p=0.004) LVEDD/LVESD :両群ともに有意な変化は認めなかった NT pro BNP :両群ともに有意な変化は認めなかった ⑤ 有害事象:CT群およびET群ともに運動療法に伴う有害事象なし 運動療法期間中の心血管イベント a.心血管イベントによる再入院(p=0.70) b.死亡(p=0.97) |
結 論 | 慢性心不全患者に対する有酸素運動とレジスタンストレーニングを併用した運動療法は、安全に実施可能であり、有酸素運動単独と比べて、運動耐容能、上肢筋力および心不全に伴う自覚症状に対する効果はより有用であることが示された。 |
回復期リハ介入前 | 回復期リハ介入後 | |
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LAD(mm) | 42 | 40 |
LVEDD(mm) | 53 | 51 |
LVESD(mm) | 45 | 43 |
LVEF(%) | 20 | 20 |
E/E’ | 11.07 | 12.21 |
回復期リハ介入前 | 回復期リハ介入後 | |
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Hb(g/dl) | 11.1 | 11.6 |
sCr(g/dl) | 1.21 | 1.14 |
eGFR(mi/min) | 44 | 42 |
NT-proBNP(pg/ml) | 1573 | 1136 |
回復期リハ介入前 | 回復期リハ介入後 | |
---|---|---|
AT(ml/min/kg) | 8.9 | 11.4 |
% AT(%) | 56 | 69 |
peakVO2(ml/min/kg) | 13.5 | 16.8 |
% peakVO2 (%) | 60 | 75 |
VE vs. VCO2 | 38.2 | 33.0 |
回復期リハ介入前 | 回復期リハ介入後 | |||||
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右側 | 左側 | 平均 | 右側 | 左側 | 平均 | |
下肢筋力体重比(kg) | 27.2 | 23.5 | 25.4 | 28.6 | 28.2 | 28.4 |
体重比(%BW) | 43.0 | 48.1 | ||||
握力(kg) | 25.0 | 26.0 | 25.5 | 27.0 | 28.0 | 27.5 |
2013年03月06日掲載