EBPTワークシート
第15回「通所リハ利用の脳卒中片麻痺者に対する応用歩行練習の介入効果」 解説

訪問リハビリテーション西堀   畠山 功

ステップ1.の解説: PICOの定式化

 Patient(患者)は、発症から期間を要している脳卒中後遺症患者とし、既に在宅で生活している片麻痺者に対して、介入効果が得られるかを検討しております。Intervention(介入)は、実際の生活場面に近い環境下で行う応用歩行練習としました。Comparison(比較)は、応用歩行練習をしていない者としました。Outcome (効果)は、歩行速度、6分間歩行距離、社会参加としました。
 

ステップ2.の解説: 検索文献

 Pubmedにてキーワード「chronic stroke,walking trainning,community」と入力しました。community(地域)と検索する方が、該当がなかったRange of activities(活動範囲)よりも良いと思います。また、ランダム化比較試験(RCT)を検索するため、フィルター機能;「randomaized controlled trial」で検索し、更に文献数を絞るため、「Publication dates 5 years」を選択した結果、11件の論文がヒットしました。その中から本症例のPICOと合致した文献を採用しました。
 

ステップ3.の解説: 検索文献の批判的吟味

 対象者の選定基準と除外基準は、明確に示されていました。対象者は、2群に無作為に分けられ、標準的治療群と標準的治療に加えて地域での歩行を行った群に振り分けられていました。比較した群間に有意な差はなく、ベースラインは同様でした。盲検化〔→盲検法(ブラインディング〕は、一重盲検で行われていました。限界点として、「only a small number of subjects」の記載があったため、患者数は十分に多いとはいえないと判断しました。割り付け時の対象者の85%は判定対象者となっておりましたが、脱落者は含まれておりませんでした。統計的仮説検定は妥当であり、結果と考察との整合性は得られていると判断しました。
 

ステップ4.の解説: 臨床適用の可能性

 7つの項目すべてにチェックすることができました。論文とは異なるものの、対象者における発症からの期間が類似している点、通所施設でも取り組める点から、在宅で生活している脳卒中片麻痺者にも適応できると判断しました。実際の環境下での歩行練習であるため、特別な機器を用いず、日々の臨床能力でも十分に実施することが可能であると判断しました。検索文献における実際の環境下での歩行場所として、ショッピングセンターがありますが、外出許可は得られていなかったため、当院の敷地内で実施できる環境下でのみ行いました。検索文献の実施期間は4週間(計20回)でしたが、通所リハビリテーション利用者であったため、1週間に2回の介入を3か月間(計24回)実施しました。実施するにあたり、介入の初期計画に対して医師、看護師、介護士、相談員の同意を得ました。初期計画を患者に対して説明し、同意を得た上で実施しました。
 

ステップ5.の解説: 適用結果の分析

 今回、脳卒中片麻痺者に対して、文献の介入方法を参考にしながら週2回の通所リハビリテーションにおいて応用歩行練習を実施しました。評価内容は、Community walk test、SIS評価の代替として、Life Space Assessmentにより活動範囲、Fall Efficacy Scaleにより転ばない自信(自己効力感)を評価しました。介入期間は異なるものの、合計実施回数は同程度実施することができました。
 3か月間の介入効果として、歩行速度や全身持久力への効果は認められませんでしたが、実際の環境下で行う応用歩行により、様々な環境への適応が可能となり、活動範囲の拡大ならびに転ばない自信へと繋がったと考えます。脳卒中片麻痺者において、歩行能力を改善するための介入方法は、麻痺による筋緊張の亢進にも配慮することが重要であると考えますが、行動変容を目的とした際には、実際の環境下で歩行練習を行うことがより効果が得られる可能性があると、本症例を通して感じました。
 

2016年12月08日掲載

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