多重共線性 multicollinearity

 重回帰分析やロジスティック回帰分析などの多変量解析を行ったときに,互いに関連性の高い説明変数(独立変数)が存在すると解析上の計算が不安定となり,回帰式の精度がきょくたんに悪くなったり,回帰係数やオッズ比などが異常な値をとったりする場合があります.このように解析結果が不安定な状態となる現象を多重共線性(またはマルチコ現象)といいます.
 多重共線性が起こりやすい条件として,①説明変数(独立変数)間の相関係数が±1に近い組み合わせが含まれること,②説明変数(独立変数)の個数がサンプルサイズに比べて大きいことなどがあげられます.いずれの条件に該当しても多重共線性が起こらない場合もあり得ますが,解析を行う前,あるいは解析結果を解釈する際にこれらの点に注意する必要があります.
 解析結果をみて異常な値が存在しないかどうかを見て,もし存在するのであればまずは説明変数(独立変数)間の相関係数を確認する必要があります.異常値が存在し,かつ強い相関を認める説明変数(独立変数)の組み合わせがあるようであれば,どちらか一方の説明変数(独立変数)を除外して再度解析を行わなければなりません.可能な限り,解析を行う前に明らかに相関が高い変数(たとえば,日常生活動作の評価尺度であるBarthel IndexとFIMの点数)の場合は,はじめからどちらか一方のみだけを説明変数(独立変数)にするようにします.
 サンプルサイズに関しては,説明変数(独立変数)の個数よりも十分に大きくなるよう,データ測定前に計画しておくことが望ましいでしょう.
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