イラストで見るEBPTの実践
第4回 「アウトカム評価指標を臨床で活用しよう」

群馬大学 医学部 保健学科
臼田滋

イラスト執筆:
大阪電気通信大学 総合情報学部
デジタルアート・アニメーション学科
しもはたふゆ

1. 評価指標を選ぶ時には何を考慮したらいいの?

評価指標を選ぶ時には何を考慮したらいいの?
新人PT:
今担当している脳卒中の◯◯さんなんですが、発症から2ヶ月たってだいぶ歩けるようになってきました。まだ1ヶ月以上は入院している予定なので、理学療法の効果を確認したいのですが、何を測定したら良いでしょうか。
先輩PT:
良かったわね。入院当初は立位バランスも不安定で大変そうだったけど、だいぶしっかりしてきたのね。確かに定期的に同じアウトカム評価指標を使って、理学療法の効果を確認した方がいいわね。評価指標はたくさんあるので、どんな評価指標が◯◯さんの状況に適しているか、一緒に考えてみましょう。
新人PT:
そうか、効果を検証する指標ってアウトカム評価指標って言うんですね。よろしくお願い致します。
先輩PT:
まずは、今の◯◯さんに対する理学療法の目標は何ですか?
新人PT:
非麻痺側の機能や認知機能は良好で、体幹も安定していますので、麻痺側下肢の運動機能の改善と日常の動作の中での麻痺側下肢の活動を促進して、歩行の自立が目標です。
先輩PT:
麻痺側下肢の機能障害に対する理学療法が主で、歩行自立が目標であれば、立位バランスや歩行に関連した評価指標でいいでしょうね。立位バランスはどうかしら?
新人PT:
非麻痺側上肢を使わずに、何分も立位保持ができていますし、あまりふらつきもありません。少し、麻痺側方向への重心移動が不安定ですが、転倒する程でもないと思います。
先輩PT:
分かりました。それでは、歩行を中心に考えてみましょう。今の歩行能力はどうですか?
新人PT:
T字杖と短下肢装具を使用して、監視の状態です。最近は、安定してきていて、転びそうになることもなく、そろそろ監視でなくても良いかと思っています。装具の装着も自立しています。日中は車椅子を使わずに、歩行しています。
先輩PT:
かなり安定してきたのね。歩行速度や持久性はどうですか?
新人PT:
歩行速度は、10m歩行テストで12秒で、1ヶ月で最大歩行速度が約2倍に良くなっていて、比較的良好です。持久性は正確には測定していませんが、100m位はあまり疲労せずに、病院内を歩行できています。ただ、足下を見ながら一生懸命歩いていることが多くて、まだ余裕はあまりありません。
先輩PT:
でも、そんなに歩けるようになってきたのね。それでは、退院後の自宅では、どの位の歩行や生活を目標にしていますか?
新人PT:
屋内は杖なしで、屋外はT字杖での自立した歩行が目標です。下肢装具については、その必要性を今後検討する予定です。
先輩PT:
活動や参加のレベルはどうですか?
新人PT:
セルフケアは入浴が部分介助かもしれませんが、ほぼ自立の状態を目指しています。◯◯さんは元々主婦で、家庭内の炊事や洗濯、掃除などの家事を、器具なども工夫して、一人で行うことを希望しています。それから、家から150m位の距離のスーパーへの買物もショッピングカートを利用したりして、一人で行うことを希望しています。
作業療法士とも相談していますが、器具や家庭内の環境の調整が少し必要だと思いますが、現実的にできそうだと思っています。ご主人もとても協力的で、◯◯さんの頑張りを見守ってくれていますし、必要があれば協力も得られそうです。
先輩PT:
分かりました。左片麻痺があるので、不自由な面があると思いますが、活動や参加のレベルの目標も高く設定できそうですね。歩行能力としても、生活場面でいろいろな動作が安全に行えるような、実用性に焦点をあてた評価指標を探してみましょうか。
新人PT:
ありがとうございます。評価指標を決める時にはいろいろと考えることが必要なんですね。理学療法の目標との整合性や、患者さんの年齢、性別などの個人的因子、今後の練習効果の見込み、ICFの活動や参加などの構成要素などを考慮することが必要なんですね。
先輩PT:
そうです。理学療法の介入内容と一致している必要がありますし、一番は患者さんにとってアウトカムが有意義かどうかが大切です。また、評価指標によってその目的はいくつかの種類があり、理学療法の介入プログラムの立案に有用な指標、判別や予後予測を目的とする指標、介入効果を確認するための患者さんの変化を反映しやすい指標があります。
アウトカム評価指標としては、変化を把握しやすい指標を選ぶ必要があります。測定方法にも、質問紙や面接などのように患者さんの自己申告式と実際の動作の観察や測定するパフォーマンス測定があります。また、ADL尺度のように包括的な評価指標と、疾患や状況に特異的な評価指標があります。今回は、歩行に特異的なパフォーマンス測定を中心に探してみましょう。

第4回 「アウトカム評価指標を臨床で活用しよう」 目次

2011年09月02日掲載

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