イラストで見るEBPTの実践
第5回 「論文を活用して患者の予後を探ってみよう!」

弘前大学大学院 保健学研究科
対馬栄輝

イラスト執筆:
大阪電気通信大学 総合情報学部
デジタルアート・アニメーション学科
しもはたふゆ

1. 歩けるようになるか、知りたい!

歩けるようになるか、知りたい!
新人PT:
先週から担当した大腿骨近位部骨折の患者さんについて、病棟スタッフによるカンファレンスがありました。そこで、目標設定のために2ヵ月後に歩行できるかどうかということを聞かれました。初期評価を行って、患者さんの状態は把握しているのですが、なんせ経験もそれほど無いので、はっきりと答えることができませんでした。「85歳で、やや高齢なので歩行までには時間がかかるかもしれません」とだけ話しておきました。
こういった予後予測のためのエビデンスと言いますか、判断の頼りになる方法は無いものでしょうか?やはり経験を積む以外、ないのでしょうか…。
先輩PT:
なかなか難しい質問ですね。確かに経験は必要だと思います。しかし、いくら経験を積んでもカンだけに頼って判断するのは危険です。文献をもとにして予後予測因子を探し、その情報から客観的に判断する習慣を身につけるべきです。まずは、文献を探してみてください。
新人PT:
インターネットからNII論文情報ナビゲータ(CiNii)やGoogle scholarを使って、文献を検索してみました。PDF形式のファイルでダウンロードできるものを印刷して読みました。
また、医療情報サービスMindsでも、大腿骨頚部/転子部骨折の『機能予後(歩行能力)は』という解説がありました。
先輩PT:
なるべくなら文献検索は、さらに広い範囲で行った方がよいです。EBPTチュートリアルの「エビデンスを検索するには」などを参考にしてみて下さい。さしあたり検索し得た情報から、何か発見はありましたか?
新人PT:
文献をまとめてみましたら、共通した危険因子として、認知症、受傷前歩行能力が低い、高齢といった要因が挙げられていました。特に認知症については、ほとんどの文献で取り上げられています。
先輩PT:
そうでしたか。ところで私の持っている文献で、理学療法開始初期のHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)から2ヵ月後の歩行予後を判別したものがありました。その文献には、以下の2×2分割表が掲載されており、p<0.01で有意に影響した、とのことです。
2×2分割表
新人PT:
それでは早速、これを根拠にして、担当患者さんの評価結果と照らし合わせてみます。HDS-Rの測定結果は…。

第5回 「論文を活用して患者の予後を探ってみよう!」 目次

2017年10月23日掲載

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