日本小児理学療法学会理事長挨拶

我が国の小児理学療法はリハビリテーションの発展に寄り添い、多くを学びながら前に進んできました。当学会はこの歴史と先達を大切にして、今に求められる多くのニーズに応えるべく、その専門性を最大限に活かし、適切な学術目標を設定、実行、その成果を明確に示すことが出来る学術団体を目指したいと考えております。
 我々の専門性に問われるのは、対象児/者とそのご家族の「健康と幸福」に寄与するか否かです。私が理学療法士として活動を始めた1980年代、小児理学療法の対象は脳性麻痺が中心であり、治療者は治療手技への関心が高く、保護者は立てる/歩けることへの関心が高く、何よりも運動機能の改善が強く求められました。社会においてはバリアフリーやユニバーサルデザインの概念がなく、残念ながら「こどもファースト」ではない世の中でした。我々の領域では、客観的な評価手法が乏しく、治療効果への疑問に明確に答えられない時代を経験しました。その後、2000年に入り、ICFの概念に基づく小児リハビリテーションの考え方へと変革しました。QOL重視、EBPT原則が今の時代の小児理学療法の基盤です。
 現在、小児理学療法の評価は機能面にとどまらず、多方面にわたり精緻化され、臨床での成果を客観的に示す方法も整備されてきました。診療の対象にはハイリスク新生児や発達障害児/者、高齢化した肢体不自由者が加わり、活動の場所は医療/福祉施設にとどまらず、学校、デイサービス、在宅訪問へと拡大するなど、人生を俯瞰した多様性への対応が求められる時代となりました。この変動の時期に法人学会として始動する訳です。「臨床から派生する研究課題」と「臨床活動を支える研究活動」という連携を今までよりさらに強固にし、多様性に対応できる小児理学療法学の発展を目指していきたいと考えております。
会員の皆さんにおかれましては、学会活動への積極的な参加をお願いいたします。

 

2022年3月 
日本小児理学療法学会 
理事長 小塚 直樹 

日本小児理学療法学会 <br>理事長 小塚 直樹<br>札幌医科大学<br>保健医療学部副学部長<br>理学療法学科<br>理学療法学第一講座<br>主任教授

日本小児理学療法学会
理事長 小塚 直樹
札幌医科大学
保健医療学部副学部長
理学療法学科
理学療法学第一講座
主任教授