理事長挨拶
このたび、井垣誠前理事長の後任として、理事長に就任いたしました、野村卓生です。会員の皆様ならびに関係の皆様に、謹んでご挨拶申し上げます。
井垣前理事長におかれましては、長年にわたり本学会を牽引し、糖尿病理学療法の学術的基盤の確立と発展にご尽力いただきました。「沖縄表明2019」による糖尿病理学療法の定義の提示をはじめ、職能に資する研究の推進、研修事業の展開、関連学会や地域との連携など、今日の本学会につながる道筋を築いてこられました。そのご功績に深く敬意を表するとともに、本学会を支えてこられた理事、評議員、各委員会の皆様、そして会員の皆様に、心より感謝申し上げます。私は、この歩みを大切に受け継ぎながら、糖尿病理学療法の価値をさらに明らかにし、その成果が医療や地域の現場で生かされる学会へと発展させてまいりたいと考えております。
本学会が示す糖尿病理学療法の定義は、糖尿病の基本治療としての運動療法を含み、運動機能が低下している方、あるいはその低下が予想される方への理学療法を対象としています。私たちが目指すのは、血糖管理への貢献にとどまらず、合併症の重症化や身体・生活機能の低下を防ぎ、糖尿病のある方々が、その人らしい生活を続けられるよう支えることです。歩くこと、働くこと、家庭や地域で役割を担うことなど、一人ひとりが大切にする暮らしに目を向け、その実現を多職種とともに支えていきたいと考えています。
新体制では、研究と国際交流の推進を継続・発展させるとともに、特に「発信力の強化」と「職能に資する研究成果の創出」を重点事業として位置づけます。
学会の活動や研究成果は、会員の間で共有するだけでは十分ではありません。糖尿病理学療法によって何を支援できるのか、どのような場面で理学療法士の専門性が生かされるのかを、糖尿病のある方々やご家族、医療・介護の専門職、行政、そして広く社会に、分かりやすく伝えていく必要があります。学会ホームページ、SNS、学術大会や学会誌など、それぞれの特性を生かし、届けたい相手に必要な情報が届く発信を進めてまいります。重視するのは、単に発信の回数や情報量を増やすことではなく、受け手の疑問に応え、日々の診療や支援に役立ち、相談や連携につながることです。また、糖尿病を専門領域としていない理学療法士にも、糖尿病理学療法の知識や視点を身近に感じていただけるよう、領域を越えた情報共有を進めます。
私が考える「職能に資する研究」とは、理学療法士が糖尿病医療や地域で果たす役割を科学的に検証し、よりよい実践と、専門性に対する適切な評価につなげる研究です。どのような方に、どの時期に、どのような支援を提供することが有効なのか。その支援によって、身体機能や生活の質、自己管理の継続にどのような変化がもたらされるのか。こうした問いに、信頼性の高い研究で答えていくことが重要であると考えています。そのために、基礎研究から臨床研究、地域での実践研究まで幅広い研究を推進するとともに、臨床現場と研究者をつなぎ、多施設で協働できる研究体制の充実を図ります。有効性だけでなく、安全性、実行可能性、医療・介護への影響などにも目を向け、理学療法の効果と限界を客観的に検証してまいります。そして、成果を論文や学会発表で終わらせることなく、日々の評価・介入の改善、教育・研修、診療ガイドラインへの反映につなげていくことを目指します。さらに、日本理学療法士協会や関連団体との連携のもと、診療報酬を含む制度への提言に活用できる根拠を蓄積してまいります。職能の発展を、糖尿病のある方々が必要な理学療法を適切な時期に、継続して受けられる環境の整備と結びつけていきたいと考えています。
この二つの重点事業は、別々のものではありません。現場の課題から研究が生まれ、その成果を分かりやすく発信することで実践が変わり、そこで得られた新たな問いが次の研究につながる。その循環を学会として支えることが、糖尿病理学療法の発展と社会への貢献につながると考えています。
国際交流についても、これまでの取り組みをさらに発展させてまいります。本学会は、大韓心臓呼吸理学療法学会(KACRPT)との相互協力を目的とした覚書(MOU)を締結しており、国際的な連携の基盤が築かれています。このつながりを学術交流や共同研究、人材育成へと発展させ、日本の臨床や研究から得られた知見を世界に発信するとともに、海外の経験や多様な視点を国内の実践に還元してまいります。特に、若手会員が国際交流に参加し、将来の共同研究につながる関係を築ける機会を大切にしたいと考えています。
これらの活動を支えるのは、会員一人ひとりの力です。臨床に取り組む方、研究や教育に携わる方、地域で活動する方、そして糖尿病理学療法を学び始めた方が、それぞれの立場から参加し、互いに学び合える学会を目指します。研究経験の多寡や所属施設、地域の違いにかかわらず、日々の疑問や実践を持ち寄り、仲間とともに発展させていける環境を整えてまいります。また、関連学会・団体や都道府県理学療法士会との連携を深め、各地の取り組みを共有し、地域の実情に応じた活動を支えていきたいと考えています。会員の皆様の声を学会運営に生かし、活動の方針や成果を共有しながら、開かれた学会づくりに努めてまいります。
諸先輩方が築かれた基盤の上に、会員の皆様とともに新たな歩みを重ね、糖尿病とともに生きる方々の暮らしと未来に貢献できる学会を目指して、誠心誠意取り組んでまいります。会員の皆様ならびに関係の皆様には、引き続きご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
一般社団法人 日本糖尿病理学療法学会
理事長 野村 卓生
日本糖尿病理学療法学会
理事長 野村 卓生
