理事長挨拶
このたび、一般社団法人 日本呼吸理学療法学会の理事長として、引き続き学会運営を担わせていただいております兵庫医科大学の玉木 彰です。
本学会は、2021年4月に一般社団法人として新たな一歩を踏み出して以来、会員の皆様をはじめ、関係学会・団体、多くの医療関係者の皆様のご支援のもと、呼吸理学療法の発展と普及に取り組んでまいりました。法人化から5年という節目を迎えた現在、改めてこれまで本学会を支えてくださったすべての皆様に心より御礼申し上げます。
近年、呼吸理学療法を取り巻く環境は大きく変化しています。COPDや間質性肺疾患をはじめとする慢性呼吸器疾患だけでなく、重症患者に対する早期リハビリテーション、周術期管理、在宅医療、フレイル・サルコペニア、さらには呼吸サルコペニアなど、理学療法士が関わる領域は急速に広がっています。また、超高齢社会の進展に伴い、「疾患を治療する」だけではなく、身体機能や活動性を維持し、患者一人ひとりの生活と社会参加を支えることが、これまで以上に重要となっています。こうした変化のなかで、本学会が果たすべき大きな使命の一つは、質の高いエビデンスを創出し、それを臨床へ届けることです。
これまでの呼吸理学療法研究は、個々の施設や研究者の努力によって発展してきました。しかし、今後さらに強固なエビデンスを構築するためには、一施設の枠を越えた多施設共同研究やレジストリ研究を推進し、わが国の呼吸理学療法に関するデータを体系的に蓄積していく必要があります。本学会が研究者と臨床家をつなぐプラットフォームとなり、「学会だからこそできる研究」を積極的に推進していきたいと考えています。
また同時に重要なのが、研究成果の「社会実装」です。優れた研究成果を論文として発表するだけでは、患者や社会を変えることはできません。得られたエビデンスをガイドラインや標準的評価法、標準的理学療法プログラムへ反映し、全国どこに住んでいても質の高い呼吸理学療法を受けられる環境を構築することが必要です。さらに、診療報酬をはじめとする医療制度への提言につなげ、呼吸理学療法の価値を社会に示していくことも、学術団体としての重要な役割であると考えています。
これからの呼吸理学療法には、新たな視点も必要です。高齢化を背景として注目されるフレイル・サルコペニア、そして呼吸筋機能低下を包含する「呼吸サルコペニア」は、呼吸理学療法が予防医学や健康寿命の延伸に貢献できる重要な領域です。また、デジタルヘルス、ウェアラブルデバイス、遠隔リハビリテーション、AIやビッグデータ解析など、新しいテクノロジーをどのように臨床へ取り入れていくかも、今後の重要な課題となります。
さらに、本学会の将来を支えるのは「人」です。若い理学療法士が呼吸理学療法に魅力を感じ、臨床上の疑問を研究へと発展させ、その成果を国内外へ発信できる環境を整えることが必要です。本学会として、教育機会の充実、若手研究者への支援、多施設共同研究への参画機会の創出などを通じて、次世代を担う人材の育成に一層力を注いでまいります。
また、呼吸ケア・呼吸リハビリテーションは、理学療法士だけで完結するものではありません。医師、看護師、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、管理栄養士をはじめとする多職種との連携、さらには国内外の関連学会・学術団体との連携を一層強化し、呼吸理学療法の専門性を高めながら、その価値を広く社会へ発信していきたいと考えています。
本学会は、これまで先人が築いてこられた歴史と伝統を大切にしながら、次の時代へ向けてさらに進化しなければなりません。
「エビデンスを創る学会」から、「エビデンスを臨床と社会の変革につなげる学会」へ。
そして、呼吸理学療法を必要とするすべての人に、より質の高い理学療法を届けることができる学会を目指してまいります。そのためには、会員一人ひとりの力が不可欠です。臨床、教育、研究、それぞれの立場から多くの皆様に学会活動へ参画していただき、ともにこれからの呼吸理学療法を創っていきたいと願っています。
一般社団法人 日本呼吸理学療法学会が、わが国の呼吸理学療法を牽引するとともに、世界に向けて新たな価値を発信できる学術団体となるよう、理事・役員一同、全力で取り組んでまいります。会員の皆様ならびに関係各位におかれましては、今後とも本学会の活動に対し、より一層のご支援、ご指導を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
一般社団法人 日本呼吸理学療法学会
理事長 玉木 彰
一般社団法人 日本呼吸理学療法学会 理事長 玉木 彰
