理事長 あいさつ

 本邦では、平均寿命のさらなる伸延により「少子超高齢」「人生100年」の社会をむかえています。スポーツ界では、身体活動の量・質の不足による心身機能不全と、スポーツ愛好や競技の浸透による外傷・障害発生という表裏一体の問題に直面し続けるでしょう。スポーツ活動による過負荷や外傷・障害による2次的問題が人生後半の数十年という間に顕在化することも危惧されます。健康な心身を財産ととらえ、適切なスポーツ活動とリスクマネジメントにより健康寿命の伸延と、生産性の維持・向上につなげることが今後の大きな社会課題になると考えます。

 スポーツ庁は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会での理学療法士の活動を受けて、第3期スポーツ基本計画において以下のように記しています。「東京大会では選手村にポリクリニック及びフィットネスセンターを一体的に設置し、医師、歯科医師、看護師はもとより理学療法士等のコメディカルスタッフも含めたスポーツ医・科学の素養を持つ多様な職種を配置して、これらの専門性を最大限に活用して、世界最先端の取組に並ぶ切れ目のない連携の下で選手のサポートを行っており、選手や大会関係者から高い評価を得ている。こうしたサポートが受けられる環境は、大規模国際競技大会の場面に限らずアスリートが競技や練習に取り組む際に恒常的に必要なものであることを踏まえ、これら多様な職種が連携してアスリートのサポートを行う体制の整備に取り組む。そして、こうした取組を人々の日常的なスポーツの場面にも展開し、国民の健康増進に寄与していく。」
 このような背景もあり、スポーツに関係するイベント、医療・コンディショニング施設、研究教育機関で多くの理学療法士が活動しており、今後も様々な分野・領域で活躍することでしょう。スポーツ庁による研究調査事業では多くの理学療法士が様々な形で参画、貢献しています。理学療法士を養成する国内4年制大学で「スポーツ理学療法」のつく科目を持つ大学の割合は約80%を超えております(本学会情報戦略・IR委員会2022年報告)。スポーツ理学療法を主たる業務とし、それを標榜する施設・機関は国公立、私立ともに増加傾向にあります。高校生や大学生に目を向けると、“選手に寄り添い結果を出す理学療法士”に憧れ、将来の仕事にしたいと考える者が増していると実感します。
 スポーツ理学療法の対象には、障がいの有無を問わず、選手、スポーツ愛好家、児童・学生、高齢者などが含まれます。さらに、関与している(しうる)領域は医療機関におけるリハビリテーションに限らず、現場でのスポーツ復帰支援や外傷・疾病の予防、学校や市区町村、企業での保健関連事業など多岐にわたり、私たちの活動範囲は拡大傾向にあるように思います。
 このような社会背景の中で日本スポーツ理学療法学会として何を率先すべきでしょうか。私としては、諸先輩方が築いてこられたスポーツ理学療法の学術レベルを底上げし、その根拠を効果的で安全な臨床・実践につなげること。そして、専門教育課程での教育に活かしていくことが特に重要と考えます。また、これらの研究成果や実践力を理学療法分野内外に発信し、広く国民に貢献しうる政策提言などにつなげていくことも重要です。
 法人学会の長としての重責を胸に、役員4期目としての実経験、ビジョン、ネットワークを最大限生かし、スポーツ理学療法学分野で地道に活動をされている会員方々が「専門職チームで社会貢献ができるプラットフォーム」のさらなる安定化を目指し、役員一同、得意を活かし、不得手を補い、公平公正に運営してまいります。また、学会の持続発展可能性を重視し、後進の方々に「引き継ぐべき」と思って頂ける土壌づくりも続けてまいります。


令和6年6月24日

日本スポーツ理学療法学会 理事長
相澤 純也(順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科)