理事長 あいさつ

 本邦では、平均寿命のさらなる伸延により「少子超高齢」「人生100年」の社会をむかえます。スポーツ界では、身体活動の量・質の不足による心身機能不全と、スポーツ愛好や競技の浸透による外傷・障害発生という表裏一体の問題に直面し続けるでしょう。

 スポーツ活動による過負荷や外傷・障害による2次的問題が人生後半の数十年という間に顕在化することも危惧されます。健康な心身を財産ととらえ、適切なスポーツ活動とリスクマネジメントにより健康寿命の伸延と、生産性の維持・向上につなげることが今後の大きな社会課題になると考えます。

 

 スポーツに関係するイベント、医療・コンディショニング施設、教育機関で多くの理学療法士が活動し、今後も様々な分野・領域で活躍することでしょう。スポーツ系理学療法を主たる業務とし、それを標榜する施設・機関は国公立、私立ともに増加傾向にあります。高校生や大学生に目を向けると、“選手に寄り添い結果を出す理学療法士”に憧れ、将来の仕事にしたいと考える者が増していると実感します。
 
 スポーツ理学療法の対象には、障がいの有無を問わず、選手、スポーツ愛好家、児童・学生、高齢者などが含まれます。さらに、関与している(しうる)領域は医療機関におけるリハビリテーションに限らず、現場でのスポーツ復帰支援や外傷・疾病の予防、学校や市区町村、企業での保健関連事業など多岐にわたり、私たちの活動範囲は拡大傾向にあるように思います。
 
 このような社会背景の中で日本スポーツ理学療法学会として何を率先すべきでしょうか。私としては、諸先輩方が築いてこられたスポーツ理学療法の学術レベルを底上げし、その根拠を効果的で安全な臨床・実践につなげること。そして、専門教育課程での教育に活かしていくことが特に重要と考えます。また、これらの研究成果や実践力を理学療法分野内外に発信し、政策提言などにつなげていくことも同じくらい重要です。
 
 法人学会の長としての重責を胸に、スポーツ理学療法学分野で地道に学術活動をされている会員の皆様が「輝き、チャンスをつかみ、専門職チームで社会貢献ができるプラットフォーム」を目指し、役員一同、得意を活かし、不得手を補い、公平公正に運営してまいります。


令和4年6月14日

日本スポーツ理学療法学会 理事長
相澤 純也(順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科)