第8回 日本ウィメンズヘルス・メンズヘルス理学療法研究会 学術大会を終えて
令和4年11月25日(金)、26日(土)、神奈川県川崎市ステーションコンファレンス川崎にて、本研究会学術大会が開催されました。
初の研究会単独開催となった学術大会でしたが、参加者は他職種を含む約400名(オンライン参加含む)となり、多くの皆様のご支援により盛会に終了することができました。心より御礼申し上げます。
オープニングセミナー
ウィメンズヘルス領域における物理療法~月経痛軽減を中心に痛みの対処を考えよう~
坂口 顕 先生(兵庫医科大学)
疼痛発生のメカニズムから電気刺激に関する基本的事項、電気刺激の月経痛に対する作用機序まで、大変に丁寧に、ときにユーモアを交えてご解説いただきました。物理療法は、理学療法の定義において運動療法に並ぶ重要な治療戦略に位置づけられています。このことを再認識する貴重な機会となりました.(櫻井)
教育講演
女性のWell-beingを脅かす"GSM"の現状と課題
太田 博明 先生(川崎医科大学 総合医療センター)
女性医療の分野でパイオニアである太田博明先生より,加齢と共に慢性化・進行することから女性の「非感染性疾患」としての基準を満たす"GSM"の基本的な考え方や最新の情報,未来への提言まで幅広く御講演いただきました.骨盤底リハビリテーションにも言及頂き,海外では標準治療として浸透しているが,日本では保険収載がなく,女性医療発展のためにも有効性の周知が重要であり使命であるとご提言いただきました.我々理学療法士が目指すべき方向性について背中を押していただいたように思います.(森)
特別講演
The effect of PFMT and alternative exercise for SUI and POP
Kari Bø先生(Norwegian School of Sport Sciences)
300近い論文発表と国際講演の実績をもつKari Bø先生より,「腹圧性尿失禁と骨盤臓器脱に対する骨盤底筋トレーニング(PFMT)と他代替療法の効果」についてご講演いただきました.“なぜPFMTが有用なのか”,“骨盤底の解剖・機能を考慮した上で代替療法は必要なのか”という点について,多数のエビデンスを元に非常にわかりやすくご説明いただき,骨盤底理学療法に関わる者として,改めて納得と自信の向上する内容だったと思います.講義は事前収録でしたが,質疑応答はノルウェーからオンラインでご対応いただき,非常に贅沢な時間となりました.(横井)
シンポジウム
ウィメンズヘルス理学療法の期待と課題〜臨床からエビデンス構築へ〜
重見 大介先生(株式会社Kids Public, 東京大学大学院客員研究員)
阿部 由依先生 (北海道科学大学)
布施 陽子 先生(文京学院大学)
布施先生からは実際のクリニカルクエスチョンをどのように研究に落とし込んでいったのかを非常に分かりやすく、具体的な流れを提示していただきました。阿部先生からは、超音波画像診断装置のElastographyを用いた骨盤底筋群の組織の硬さについて、新たな評価指標の可能性を提示していただきました。産婦人科医の重見先生からは、我が国のウィメンズヘルスの理学療法におけるエビデンスの現状と海外での状況から、エビデンスを構築するための日々の臨床評価の標準化の重要性、実際に先生がエビデンス構築された際のお話など幅広くご講演頂きました。
講演後、先生方には多くの質問に対して一つ一つ丁寧にお応え頂きました。目の前の臨床を行うだけでなく、本領域で悩む方々を救うために、エビデンス構築がなぜ重要なのか?先生方の熱い想いを感じることができた、充実したシンポジウムでした.(田舎中)
一般演題
45演題の一般演題の発表がありました。どのセッションも活発な質疑応答があり、非常に活気あふれる演題発表となりました。非常に印象に残ったのは発表後の演者間での情報交換やディスカッションでの盛り上がりです。学会の重要な点はこのようなライブでの会員の交流であることを再認識することができました. (松本)