理事長 挨拶

 我が国は世界に先駆けて超高齢社会を迎え、医療・介護を取り巻く環境は大きく変化しています。理学療法においても、疾病や障害が生じた後の機能回復支援のみならず、疾病や障害そのものを予防し、健康寿命の延伸や生活機能の維持・向上に貢献することが強く求められる時代となりました。そのような中、『予防理学療法』の果たす役割はますます重要性を増しています。
 
 『予防理学療法』は、特定の疾患や領域に限定された学問ではありません。運動器、神経、内部障害、スポーツ、産業、地域理学療法など、あらゆる理学療法分野を横断する基盤的な学問領域です。また、その対象は健康な人から疾病や障害を有する人まで幅広く、その実践の場も地域、医療機関、介護施設、在宅、職場、学校など多岐にわたります。言い換えれば、『予防理学療法』は理学療法学全体を支える横断的かつ統合的な学問であると言えます。本学会は、『予防理学療法』を理学療法の一領域ではなく、すべての理学療法分野に共通する基盤的な考え方として位置づけています。
 
 そのため、『予防理学療法』に携わる理学療法士には、専門分野における高度な知識と技術を有する「スペシャリスト」であることに加え、対象者の生活や社会環境、多様な健康課題を包括的に捉える「ジェネラリスト」としての視点も求められます。疾病や障害だけでなく、その人の生活機能や社会参加、さらには人生そのものを見据えながら支援を行うことが、予防理学療法の本質であると考えています。
 
 一方で、『予防理学療法』は比較的新しい学問領域であり、いまだ発展途上の段階にあります。近年、多くの研究成果が蓄積されつつあるものの、その評価方法や介入戦略、社会実装のあり方については、なお検討すべき課題が数多く残されています。だからこそ、本学会には研究と実践の双方を発展させ、新たなエビデンスを創出し、その成果を社会へ還元していく重要な使命があります。
 
 日本予防理学療法学会は、研究者、臨床家、教育者、そして関連する多職種との連携を深めながら、『予防理学療法』のさらなる発展に取り組んでまいります。そして、科学的根拠に基づく実践を推進するとともに、国民の健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献できる学会を目指してまいります。今後とも、会員の皆様をはじめ関係各位のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
 

 2026年4月
日本予防理学療法学会
理事長 山田 実