慢性閉塞性肺疾患患者に歩行車を用いて歩行させたときの運動耐容能の改善メカニズムについて

Probst VS, Troosters T, Coosemans I, Spruit MA, Pitta Fde O, Decramer M, Gosselink R: Mechanisms of improvement in exercise capacity using a rollator in patients with COPD. Chest. 2004 ;Vol126,No4(1102-1107).

PubMed PMID:15486370

  • No.1106-2
  • 執筆担当:
    甲南女子大学
    看護リハビリテーション学部
    理学療法学科
  • 掲載:2011年6月10日

【論文の概要】

背景

重度なCOPD患者に対する歩行車の使用は、歩行耐久性を改善すると報告[1.-3.]されている。しかし、歩行車使用による心循環器系の反応について検討した報告は少なく、そのメカニズムについてはほとんど検討されていない。

目的

本研究の目的は、COPD患者の歩行車使用が、6分間歩行試験での歩行距離、および肺でのガス交換、心拍数、分時換気量、動脈血酸素飽和度、症状の変化にどのように影響するのかを検討することである。

対象

対象はCOPD患者14名(平均年齢70歳(65-76歳)、%FEV1 45%(33-67%)。重症度としては軽症1例、中等度5例、重症6例、最重症2例であった。

方法

6分間歩行試験を歩行車使用、非歩行車使用の二つの条件で行った。
測定項目は、歩行距離、VO2、呼吸数、Duty cycle(吸気時間/全呼吸時間)、一回換気量、分時換気量、終末呼気二酸化炭素分圧、経皮的動脈血酸素分圧、心拍数、呼吸困難感(Borg scale)、最大分時換気量とした。

結果

歩行距離は、非歩行車使用が416m(396-435m)、歩行車使用が462m(424-477m)であり、歩行車使用で有意に改善した。特に、非歩行車使用での6分間歩行試験結果が悪い重度な患者で、歩行車使用による歩行距離の改善がより多く見られた。
VO2、分時換気量、最大分時換気量、一回換気量は、非歩行車使用に比べ歩行車使用で有意に高い値を示した。呼吸困難感は、歩行車使用により減少した。

考察

歩行車使用にて、COPD患者の運動耐容能は改善するため、歩行車使用はこれら患者の歩行耐久性改善に有用である。歩行車使用により分時換気量が増加することがその大きな要因と考えられるが、それは最大の換気容量を表す最大換気量が歩行車使用時に増加することが大きく影響している。また、最大換気量の増大は、体幹前傾位での上肢支持により、呼吸補助筋が換気に参与しやすくなること、横隔膜運動が改善することが影響していると考えられた。

【解説】

重度のCOPD患者では、わずかな運動負荷でも息切れが生じる。また、運動耐容能を改善するために積極的に運動療法を行おうとしても息切れのため十分な運動負荷をかけることができず、結果として運動耐容能の改善効果も低下する。このような患者で比較的少ないコストで入手可能な歩行車の使用により歩行耐久性が改善できることは、運動療法を行う上はでより高い負荷をかける手段として用い有用であること、さらにADLを行う上でも非常に有用である。
さらに、本論文では上肢を支持した姿勢では、換気容量が増大することを報告している。このことは、歩行のみならず、これら患者のADL中の息切れ改善に上肢支持が活用できることを示唆している。

【参考文献】

  1. Solway S, Brooks D, Lau L, Goldstein R. The short-term effect of a rollator on functional exercise capacity among individuals with severe COPD.Chest. 2002;Vol122,No1(56-65).
  2. Gupta R, Goldstein R, Brooks D. The acute effects of a rollator in individuals with COPD.J Cardiopulm Rehabil. 2006;Vol26,No2(107-111).
  3. Gupta RB, Brooks D, Lacasse Y, Goldstein RS. Effect of rollator use on health-related quality of life in individuals with COPD.Chest. 2006 ;Vol130,No4:(1089-1095).

2011年06月10日掲載

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