足関節内反捻挫受傷後などに生じる慢性的な足部不安定性は、構造的不安定性と機能的不安定性(FAI)に大別される[2]。構造的不安定性は一般的に「関節構成体の損傷により生理学的な関節可動域を逸脱し、副運動が増大して不安定性が残存している状態」と定義され、FAIは「構造的不安定性の有無に関わらず、足関節捻挫受傷後に不安定感”giving way”が残存している状態」と定義されている[2, 3]。先行研究では、慢性的な足部不安定性を有する者のうち、構造的不安定性を有する割合は24~68%と報告されており[4,5,6]、慢性的な足部不安定性は構造的不安定性以外の要因によっても引き起こされることが示唆されている。そのため構造的不安定性のみならず、FAIを評価することは重要であると考えられる。本研究では、FAIを評価して、パフォーマンスとの関連を検討しているという点で有意義なデータを提供している。
足関節の側方の安定性は主に靭帯や腓骨筋群、後脛骨筋に委ねる部分が大きい。そのため、足関節捻挫受傷後等の固有感覚障害や神経筋コントロール障害、筋力低下は動的安定性の破綻を惹起し、機能的不安定性を生じる要因となる[2, 3]。本研究ではFAIと片脚横跳びや片脚8の字跳躍のように、横方向や回旋方向のストレスが足関節に加わるテストにおいての相関が認められており、側方の動的安定性の破綻がFAIに影響を及ぼすことを支持する結果となっている。このことから、臨床の場面においてFAIの有無を判断するためには、横方向、回旋方向へのストレスが足関節に加わる課題を選択する必要があると考えられ、このようなテストを選択することで足関節捻挫後の競技復帰の時期の決定などに役立つことが考えられる。
しかし、本結果ではFAI indexと片脚横跳びや片脚8の字跳躍との間の相関係数が小さく、また明らかなパフォーマンスの低下が認められなかったにもかかわらず、不安定感を訴えた者の多いテストも存在している。これらのことから他覚的な結果のみならず、自覚的な症状も調査するとともに、横方向や回旋方向のストレスが足関節に加わるテスト以外のテストも用いて、FAIとパフォーマンスの関連をさらに詳細に調査する必要があると考える。また、FAIの質問項目や重症度の分類もさらに詳細に検討する必要があると考える。