早期パーキンソン病患者に対する集中的リハビリテーション:二年間のフォローアップ期間の予備的無作為試験

Frazzitta G, Maestri R, et al. Intensive rehabilitation treatment in early Parkinson's disease: a randomized pilot study with a 2-year follow-up. Neurorehabil Neural Repair. 2015; 29: 123-131.

PubMed PMID:25038064

  • No.1512-2
  • 執筆担当:
    畿央大学健康科学部
    理学療法学科
  • 掲載:2015年12月4日

【論文の概要】

背景

 パーキンソン病に対する運動療法は運動症状を短期的に改善させることが明らかにされている。これまでの研究からリハビリテーションは疾患の進行を抑制する神経保護作用がある可能性があるが、疾患の重症度が異なっていたり、多様な抗パーキンソン病薬を内服したりしていると、リハビリテーションによる疾患の進行の抑制効果を明確にすることができない。

目的

 本研究の目的は、 2年間のフォローアップ期間の予備的無作為化試験により、多職種による集中的リハビリテーションが早期パーキンソン病患者の疾患の進行を遅らせることができるのかどうかについて明らかにすることとした。

方法

 40名の新たに診断を受け抗パーキンソン病薬の一つであるモノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬のみで治療している早期パーキンソン病患者(ヤール1-1.5)を、多職種による集中的リハビリテーションを行う群と対照群に無作為に分けた。多職種による集中的リハビリテーションを行う群は、年1回、4週間、週5日、1日2時間の理学療法と1時間の作業療法を受けた。対照群は抗パーキンソン病薬による治療のみを実施し、リハビリテーションを行わなかった。

結果

 多職種による集中的リハビリテーションを受けた20名のうち16名が、対照群20名のうち15名が研究を終えた。研究開始時点ではHoehn and Yahr stageや抗パーキンソン病薬の治療内容に差はなかった。また、多職種による集中的リハビリテーションによる副作用は研究期間中観察されなかった。多職種による集中的リハビリテーションを受けた群は2年間の研究期間終了後、パーキンソン病の日常生活動作の障害や運動障害の重症度の評価指標であるUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)-日常生活、運動スコアが研究開始時と比較して有意にいい状態であったが、対照群は研究開始時と比較して差がない状態であった。また、対照群の抗パーキンソン病薬の内服量は2年間で有意に増加し、研究期間終了後、MAOB阻害薬のみの治療のものは20%のみであった。一方、多職種による集中的リハビリテーションを受けた群では抗パーキンソン病薬の内服量は対照群より有意に少なく、研究期間終了後MAOB阻害薬のみの治療のものは75%いた。

考察

 早期のパーキンソン病患者に対する多職種による集中的リハビリテーションは疾患の進行を遅らせ、内服量を維持することが比較的長期のフォローアップ期間を持った無作為化試験により初めて示された。今回の結果は、運動療法が神経保護作用あるいは神経回復作用がある可能性を示唆している。運動療法の効果の機序については神経栄養因子のレベルを上昇させることや成長因子の循環の改善が脳の可塑的変化を促す可能性などが考えられているが明らかにされていない。

まとめ

 早期のパーキンソン病患者に対する多職種による集中的リハビリテーションは疾患の進行や抗パーキンソン病薬量にいい影響を及ぼす可能性がある。

【解説】

 パーキンソン病の運動療法はパーキンソン病の機能障害や歩行能力、バランス能力を改善させることが2013年のコクランシステマティックレビュー1)において報告されているが、長期効果については明らかにされていなかった。この研究は、パーキンソン病患者に対する早期からの長期リハビリテーションが疾患の進行を遅らせ、抗パーキンソン病薬の内服量の増加を防ぐ可能性をはじめて示した研究であり、臨床的意義は非常に大きい。この研究では診断を受けて間もないヤール1から1.5の患者を対象にしているが、日本においてこの時期にリハビリテーションが処方されることは少ない。医療従事者も当事者であるパーキンソン病患者も本研究のような早期からの長期リハビリテーションの効果をまずは十分に認識することが重要である。

【参考文献】

  1. Tomlinson CL, Patel S, et al. Physiotherapy versus placebo or no intervention in Parkinson's disease. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 9: CD002817.

2015年12月04日掲載

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