異なる二か所で計測した、荷重インパクトの割合と最大加速度の相関比較~被験者内-被験者間の検討~

Zhang JH, An WW, Au IP, Chen TL, Cheung RT.Comparison of the correlations between impact loading rates and peak accelerations measured at two different body sites: Intra- and inter-subject analysis.Gait & Posture 46 (2016) 53–56

PubMed PMID:27131177

  • No.1609-2
  • 執筆担当:
    畿央大学健康科学部理学療法学科
  • 掲載:2016年9月1日

【論文の概要】

背景

 継続する高負荷(VALR)と瞬間的な垂直方向の荷重率(VILR)は、多くのランニング関連の損傷と関係している。そのため、屋外でランニングする際の荷重による影響を推定するため、加速度計による最大加速度(PA)が使われるようになった。

目的

 本研究の目的は、ランニング時の、2つの異なる身体部位で測定される垂直荷重率とPA間の被験者内および被験者間の相関を比較することである。

方法

 対象は10名の健常成人(うち女性2名、平均年齢23.6±3.8歳、平均身長1.73±0.08 m、平均体重66.1±12.7 kg)。床反力データを、異なる速度(通常速度、通常速度+15%、通常速度-15%)と異なる傾斜面(平坦、10%上り、10%下り)のトレッドミルによって計測するとともに、脛骨遠位と外果に貼付した加速度計により最大加速度を計測した。床反力と加速度のサンプリング周波数は1kHz、50Hzのバーターワース・ローパスフィルタによるフィルタリングで処理をした。荷重率は先行研究より踵接地時の床反力がピークを迎えるまでの20%~80%まで時間をそれぞれの荷重量で割る方法を採用した。VALR、VILRと2か所の着地時PAは、各走行試験における連続した40ステップで計測した。

結果

 被験者内の検討では、荷重率と外果部のPA(r=0.561-0.950、p < 0.001)、脛骨遠位部のPA(r=0.486-0.913、p < 0.001)のそれぞれの間に有意な正の相関関係があった。荷重率との相関は外果で計測されたPAの方が脛骨遠位部で計測されるより有意に強い相関を示した(p=0.004)。一方、被験者間の検討では、遠位脛骨のVALRとVLIRはそれぞれ3.88±3.09BW/sと5.69±3.05BW/sであり、外果は5.24±2.85BW/sと6.67±2.83BW/sであった。

考察

 歩行での先行研究と比して、今回の走行では相関係数が低かったのは走行により四肢遠位が速度による影響を受けたからであろう。

まとめ

 脛骨遠位部で計測するよりも、外果のPAは、VALRまたはVILRと強い相関がある。しかし、ランニング時の垂直荷重率を被験者間で比較するためにPAを使用するときは注意が必要である。

【解説】

 加速度計を用いた動作分析の報告である。また、加速度計を用いた動作分析の多くは速度因子を多く含む四肢末端ではなく、体幹や頭部など動きが少ない場所に貼付し、ざっくりとした活動量を計測するものが多く1)あるが、近年では、今回の報告にも引用されている2)ように、解析方法に注意することによって歩行や走行の分析が可能になってきた。今回の報告は加速度のみを計測したものであるが、角速度を計測し、各関節の角度などを同時に計測したという報告も散見されるようになってきた。今後、これらのエビデンス能力の向上により、高価で場所の制約を受ける、床反力計や三次元動作解析装置が加速度計や角速度計にとって代わる時代が来るかもしれない。

【参考文献】

  1. Mizuike C, Ohgi S, Morita S.: Analysis of stroke patient walking dynamics using a tri-axial accelerometer. Gait Posture. 2009 Jul;30(1):60-4.
  2.  Crowell HP, Davis IS.: Gait retraining to reduce lower extremity loading in runners. Clin Biomech. 2011 Jan;26(1):78-83.

2016年09月01日掲載

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