リウマチ性疾患を伴う女性患者に対する高強度インターバルトレーニングの効果: 予備的研究

Sandstad J, et al. : The effects of high intensity interval training in women with rheumatic disease: a pilot study. Eur J Appl Physiol. 2015 Oct;115(10):2081-9.

PubMed PMID:26013051

  • No.1704-2
  • 執筆担当:
    札幌医科大学大学院
    保健医療学研究科
    檜森 弘一
  • 掲載:2017年4月1日

【論文の概要】

背景、緒言

 関節リウマチ(RA)は、滑膜炎症、関節の腫脹および変形に特徴づけられる慢性かつ全身性の免疫疾患である。また、RA患者は心血管疾患(CVD)リスクが高いことが知られている。一方、高強度インターバルトレーニング(HIIT)は心血管の健康維持に有効であることが報告されている。

目的

 本研究の目的は、リウマチ性疾患患者において、85-95% HRmaxでのHIITを10週間実施することによりCVDのリスク因子が改善されるか、またこれらの患者が今日推奨されているHIIT強度に十分耐えうるか検討することである。

方法

 関節リウマチ患者7名、若年性突発性関節炎患者11名を対象とし、クロスオーバーデザインにより運動介入を実施した。HIITは、85-95% HRmaxの強度で、1回4分を4セット、1週間に2日の頻度で、10週間実施した。測定項目は、VO2max、HR回復度、血圧、体組成および血液データとし、HIITの前後に測定した。

結果

 VO2maxは、HIIT前に比べHIIT後に12.2%増加し、HR回復度は2.9%増加した。また、HIIT前と比較してHIIT後において、BMI、体脂肪、腹囲はそれぞれ1.2%、1.0%、1.6%減少し、筋量は0.6%増加した。なお、疾患活動性と痛みはHIIT前後で変化しなかった。

考察・結論

 本研究における運動強度は、最大強度に近いかなりの高強度であったにも関わらず、リウマチ性疾患患者において疾患活動性や痛みの増悪は認められなかった。したがって、HIITはこれらの患者において十分耐えうる運動であったと考えられる。さらに、HIITは複数のCVDリスクに関与する変数を改善したことから、CVDリスクに対する運動療法として有効である可能性が示唆された。これらの知見から、HIITは関節リウマチ患者や若年性突発性関節炎患者に対する非薬理学的介入方法として有望であると考えられる。

【解説】

 リウマチ患者の死亡要因には、心血管疾患が大きく関与することが報告されている1)。そのため、四肢の筋力低下とともに心血管リスクに対するアプローチも理学療法では考慮されなければならない。ただし、RA患者に対する運動療法で問題になるのが関節の痛みや炎症である。本論文では興味深いことに、HIITにより疾患活動性や痛みに増悪を認めていない。今後、臨床においてリウマチ性疾患患者に対し、HIITの処方を推し進めていくためには、HIITの有効性とともに安全性に関するエビデンスのさらなる蓄積が必要であると考えられる。
 
※高強度インターバルトレーニング:短時間の高強度運動と休息あるいは低強度運動を交互に行うトレーニング方法であり、通常の低-中強度で長時間行う持久性トレーニングよりも効果的にVO2maxを増加させることが報告され2)、近年注目を集めている。

【引用・参考文献】

  1. Avina-Zubieta JA, Choi HK, et al.: Risk of cardiovascular mortality in patients with rheumatoid arthritis: a meta-analysis of observational studies. Arthritis Rheum. 2008; 59 (12): 1690-7.
  2. Haykowsky MJ, Timmons MP, et al.: Meta-analysis of aerobic interval training on exercise capacity and systolic function in patients with heart failure and reduced ejection fractions. Am J Cardiol. 2013; 111: 1466‒9.

2017年04月01日掲載

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