介護者による介入は慢性期脳卒中患者の身体機能回復を改善する:ランダム化比較試験

Wang TC, et al. : Caregiver-mediated intervention can improve physical functional recovery of patients with chronic stroke: a randomized controlled trial. Neurorehabil Neural Repair. 2015 Jan;29(1):3-12.

PubMed PMID:24788580

  • No.1706-2
  • 執筆担当:
    札幌医科大学保健医療学部
    理学療法学科
    田代英之
  • 掲載:2017年6月1日

【論文の概要】

背景、緒言

 慢性期脳卒中患者は退院後もリハビリテーションのトレーニングを継続することで効果が得られる可能性がある。

目的

 本研究の目的は介護者による自宅での介入(Caregiver-mediated, home-based intervention, CHI)が身体機能や社会参加を改善するか検討することであった。

方法

 研究デザインは、評価者のみをブラインドした12週間の一重盲検化比較試験とした。台湾の3病院を退院した51名の慢性期脳卒中患者(発症後6ヶ月以上、ブルンストロームステージⅢ-Ⅴ)を対象とした。対象者および介護者は、毎週理学療法士による個別のCHIトレーニングを行なった介入群(n=25)と、療法士の訪問はあったがトレーニングは行わなかったコントロール群(n=26)に分類した。対象者の身体機能の指標として開始時と終了時に、Stroke Impact Scale(SIS)、Berg Balance Scale(BBS)、10m歩行試験、6分間歩行距離、Barthel Index(BI)を評価した。また、介護者に対してはCaregiver Burden Scale(CBS)を評価した。

結果

 介入群はSISの筋力、移動能力、身体機能領域(筋力、手指機能、移動能力、日常生活動作/手段的日常生活活動の合計)、一般的回復、および歩行速度、6分間歩行距離、BBS、BIで、コントロール群と比較し有意に改善した。しかし、CBSは介入群、コントロール群とも変化しなかった。

考察

 慢性期脳卒中患者は持続的な身体機能の回復のために体系化したリハビリテーションプログラムを継続的に行う必要があることが示唆された。また、自宅の環境での生活活動を繰り返し行うことが、対象者の移動能力やバランス、セルフケア能力が向上させた可能性がある。介護者は対象者と近しい関係にあり、同じ環境で生活をしていることが多く、対象者にとってファシリテーターとして最適であるが、ケアやリハビリテーションスキルについて指導が必要である。そのため、介護者のスキル向上は対象者の身体機能の維持・向上に効果的であると考えられた。

まとめ・結論

 慢性期脳卒中患者は脳卒中者に対するCHIは身体機能を改善し、社会参加を促す可能性がある。

【解説】

 在宅生活を送る脳卒中患者において、言うまでもなく介護者の支援は必須であり、脳卒中治療ガイドライン20151)では、「患者・家族に対し、現在の患者の状態や治療、再発予防を含めた脳卒中に関連する知識、障害を持ってからのライフスタイル、リハビリテーションの内容、介護方法やホームプログラム、利用可能な福祉資源などについて、早期からチームにより、患者・家族の状況に合わせた情報提供に加えて、教育を行うことが勧められる」とされている。本研究は、12週に渡り具体的なリハビリテーションプログラムの内容および介護者の役割が提示されている点、介護負担感の増悪なく、対象者の心身機能や活動・参加レベルを向上することが示された点で、臨床的に有用である。

【引用・参考文献】

  1. 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会(編).脳卒中治療ガイドライン2015.協和企画.pp284-5

2017年06月01日掲載

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