研究の目的は、頸部痛のある高齢者に対するマリガンモビライゼーション手技(Mulligan Mobilization Technique:MMT)が痛み、関節可動域、機能レベル、運動恐怖感、抑うつおよびQOLに及ぼす効果を無作為化比較試験、二重盲検法を用いて検証することであった。神経学的、リウマチ性または筋骨格系疾患のない3か月以上の頸部痛がある42名の高齢者を無作為に、温熱、TENSおよび運動療法を含んだ一般的な理学療法群と、それらにマリガンモビライゼーションを加えた群に割り付けた。介入回数は10回で、介入前後で痛み(VAS)、Neck Disability Index (NDI)、Tampa Scale of  Kinesiophobia (TSK)、頸部ROM、Beck Depression Inventory (BDI)、Short Form-36 (SF-36) の6つの評価項目を比較した。その結果、両群ともに6つの評価項目で介入後に有意に改善した(p<0.05)。両群を比較した結果、マリガンモビライゼーションを加えた群では頸部ROM、TSK、BDIおよびQOLにおいて加えなかった群より有意に効果が大きかった(p<0.05)。頸部痛のある高齢者に対するマリガンモビライゼーションは大きな治療効果をもたらすことが示された。