人工膝関節置換術後早期の高強度および低強度リハビリテーションの比較(無作為化比較試験)

Bade MJ, Struessel T, Dayton M, Foran J, Kim RH, Miner T, Wolfe P, Kohrt WM, Dennis D, Stevens-Lapsley JE: Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Sep;69(9):1360-1368.

PubMed PMID:27813347

  • No.1908-01
  • 執筆担当:
    順天堂大学保健医療学部理学療法学科
    飛山 義憲
  • 掲載:2019年8月1日

【論文の概要】

【論文の概要】この研究では人工膝関節置換術(Total knee arthroplasty, TKA)後4日目に開始する高強度リハビリテーションの安全性と有用性を,低強度リハビリテーションと比較し検討している。変形性膝関節症を原疾患としてTKAを施行する162名を無作為に高強度群,低強度群に群分けした。両群とも疼痛,腫脹,創部の管理や歩行練習などは同様に行い,高強度群は高強度のレジスタンストレーニングを,低強度群は抵抗の小さい運動などが行われた。その結果,主要アウトカムであるstair climbing test,副次アウトカムであるTimed Up & Go testや6分間歩行テスト,患者立脚型評価であるWOMACなどは術後3ヶ月,12ヶ月ともに群間差は認めず,両群とも術前に比べ改善を認めた。これらの結果から,筆者らは高強度リハビリテーション,低強度リハビリテーションともにTKA後の運動機能改善に有効であると報告している。

【解説】

【解説】TKA後には膝伸展筋力や歩行能力など,運動機能の低下が著明にみられるため,これらを回復させることは術後の理学療法にとって最大の課題である。このような運動機能の低下は術後早期に著明に生じることから,術後早期の高強度リハビリテーションの有効性に焦点を当て検討している。その結果,高強度リハビリテーションにおいても低強度リハビリテーションにおいても同様にアウトカムの改善を認めている。この論文では高強度リハビリテーションと低強度リハビリテーションに違いが見られなかった理由を大きく3つ挙げている。1つはこの研究で用いられた介入は高強度も低強度も,どちらも本質的には漸増的な負荷であったために,同程度の負荷になってしまった可能性を論じている。この研究では高強度リハビリテーションと低強度リハビリテーションで基本的に運動内容が異なるため,強度を直接比較するということが難しくなっている。また,これまでに退院から外来へと移行するまでに在宅医療に費やした日数が長いほどアウトカムが不良となることが報告されており1),2つ目の理由としてこのようなクリニカルパスによる影響を挙げている。この研究では膝関節可動域や膝伸展筋力の回復において,高強度リハビリテーション,低強度リハビリテーションともに先行研究2-4)に比べ良好な値を示しており,今後はこのようなクリニカルパスの違いも考慮に入れた詳細な検討が必要になるだろう。さらに,この研究では低強度リハビリテーションに比べ高強度リハビリテーションではホームエクササイズを適切に実施した対象者の割合が有意に低くなっており,低強度リハビリテーション群のホームエクササイズの適切な実施や身体活動量がアウトカムに群間差が生じないという結果に影響を及ぼしたことが挙げられている。このような介入以外の因子の統一は非常に難しく,同様な介入研究を行う際の課題と言えるだろう。

【引用・参考文献】

  1. Brennan GP, Fritz JM, et al: Outpatient rehabilitation care process factors and clinical outcomes among patients discharged home following unilateral total knee arthroplasty. J Arthroplasty. 2015; 30(5): 885-890.
  2. Jakobsen TL, Kehlet H, et al: Early progressive strength training to enhance recovery after fast-track total knee arthroplasty: a randomized controlled trial. Arthritis Care Res (Hoboken). 2014; 66(12): 1856-1886.
  3. Stevens-Lapsley JE, Balter JE, et al: Early neuromuscular electrical stimulation to improve quadriceps muscle strength after total knee arthroplasty: a randomized controlled trial. Phys Ther. 2012; 92(2): 210-226.
  4. Stevens-Lapsley JE, Bade MJ, et al: Minimally invasive total knee arthroplasty improves early knee strength but not functional performance: a randomized controlled trial. J Arthroplasty. 2012; 27(10): 1812-1819.

2019年08月01日掲載

PAGETOP