本論文は、Mortenson WB、Dermers Lらの研究グループによる福祉機器を使用した介入効果についてのRCT研究であり、これまでシステマティックレビュー
1)、使用者である要介護者と介入の効果
2)、介助者の負担感についての評価尺度の開発
3)などの質的・量的研究を報告している。本論文における福祉機器ATは、車いす、電動車いす、杖、歩行器、手すり、などの移動補助具、バスシートなどの屋内ADL用機器などである
4)5)。彼らによるシステマティックレビュー
1)によると、先行研究では効果は認められるとの研究は多く、ATによる家族介助者への効果は認められ、介助者の介助量や情緒的負担感も軽減しているが、いずれもエビデンスの質が課題であるとされている。
本論文における在宅において介助者を参加させた福祉機器による介入方法ATPUT(the home-based assistive technology provision, updating and tune-up)とは、以下のプロセスにより構成される。
- 要介護者と家族介助者と協働して問題のある動作を認識し優先順位付け
- 要介護者のADLと社会参加を在宅や地域で評価
- 介助者による支援やATを把握
- セラピストによる介助とATに関する変更内容を提案
- OTがATの提供、メンテナンス、チューンアップなどの計画について要介護者と介助者との交渉。(ATの推奨、修理や購入費用の援助、AT使用者への使用方法、トレーニング、フォローアップ訪問などの提案も含まれる。)
このATPUTの介入効果検討の尺度として、福祉機器を使用している要介護者のADLやIADL機能と、その介助者の負担感について評価している。要介護者のADLやIADLはSMAF
6)、自ら評価するSR-FIM
7)、地域社会への参加度合いを評価するRNLI
8)、本研究グループが開発した福祉機器使用者へ介入方法と介助者の負担感評価であるCATOM
3)を使用してある。
本論文ではATPUTによる介入をRCTにより検討し、ADLと介護負担への効果は認められたものの、介入群と対照群に効果の差はなかった。両群に有意差はなかった理由としては、対照群においても日常的に行っている介助者による介助は制限されていなかったため、両群の介入内容に明確な差がなかったことと、評価ツールの感度のためと考察されている。効果が認められた先行研究では、ATや人的介助において介入内容や量の明らかな違いのもと比較されていた。
今後は、介助者の参加度合いのコントロールや、様々な側面ができるような評価尺度の感度などが課題となるものと考察されている。日常生活における福祉機器を使用した介助についての介入を検討し、要介護者の生活機能の改善と介助者の介護負担の軽減が示唆されており、在宅ケアを積極的に進める時代にとって有用性の高い論文である。