手軽に利用できる技術を用いた脳卒中後の遠隔リハビリテーション：無作為化比較試験
Saywell NL, Vandal AC, Mudge S,, et al: Telerehabilitation After Stroke Using Readily Available Technology: A Randomized Controlled Trial. Neurorehabil Neural Repair 35: 88-97, 2021
PubMed PMID:33190615
- No.2105_01
- 執筆担当：
順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科
藤野 雄次 - 掲載：2021年5月10日
【論文の概要】
脳卒中患者の自己管理を促進する方法の１つにAugmented Community Telerehabilitation Intervention (ACTIV；拡張社会での遠隔リハビリテーション)がある。本研究は6カ月間のACTIVが通常のケアと比較して身体機能を改善させるかを検討した。対象は初発脳卒中後に自宅退院した95例（ACTIV群: n=47、対照群: n=48）であり、ベースライン・介入後・介入後6カ月にStroke Impact Scaleの身体的サブコンポーネントを比較した。介入後、ITT解析では両群間に有意差はなかったが、ACTIVプロトコールの50%以上を実施した対象者に限定すると（n=43）、対照群と有意差を認めた。身体機能の改善は介入後6カ月まで維持されなかった。以上から、50%以上のACTIVは通常ケアと比較し、退院直後の身体機能の改善に有効である可能性が示された。
【解説】
携帯電話を利用したリハビリテーションは、冠状動脈性心臓病患者のリスク軽減や１）、運動不足の人の運動量増加のために使用されてきた２）。一方、脳卒中患者が退院後に陥る頻度の高い不活動に対する遠隔リハビリテーションの効果は明らかではない。
本論文で採用されたACTIVは、行動変容理論に基づいて設計された6カ月間の遠隔リハビリテーションプログラムであり３－４）、対面式のセッション、電話連絡、テキストメッセージによるリマインダー送信を組み合わせ、継続的な身体活動をサポートするものである。本論文で示された遠隔リハビリテーションの効果は、交通アクセスや流行性感染症など通院や自宅訪問を制約しうる種々の問題を解決する方法として発展することが期待される。
本論文の限界として、研究が実施されたニュージーランドでは、リハビリテーション施設を退院したあとの「通常のケア」とは、それ以上の正式なリハビリテーションを行わないことを意味する点である。すなわち、本論文の対照群はACTIVに対するコントロール課題が設定されていないことに留意する必要がある。今後、本邦の生活期において一般的に実施されるリハビリテーションとの効果や、他の遠隔リハビリテーションの効果（アクセスの容易さ、継続性、実施率など）の差異に関する検証が求められる。
本論文で採用されたACTIVは、行動変容理論に基づいて設計された6カ月間の遠隔リハビリテーションプログラムであり３－４）、対面式のセッション、電話連絡、テキストメッセージによるリマインダー送信を組み合わせ、継続的な身体活動をサポートするものである。本論文で示された遠隔リハビリテーションの効果は、交通アクセスや流行性感染症など通院や自宅訪問を制約しうる種々の問題を解決する方法として発展することが期待される。
本論文の限界として、研究が実施されたニュージーランドでは、リハビリテーション施設を退院したあとの「通常のケア」とは、それ以上の正式なリハビリテーションを行わないことを意味する点である。すなわち、本論文の対照群はACTIVに対するコントロール課題が設定されていないことに留意する必要がある。今後、本邦の生活期において一般的に実施されるリハビリテーションとの効果や、他の遠隔リハビリテーションの効果（アクセスの容易さ、継続性、実施率など）の差異に関する検証が求められる。
【引用・参考文献】
1) Chow CK, Redfern J, Hillis GS, et al. Effect of lifestylefocused text messaging on risk
factor modification in patients with coronary heart disease: a randomized clinical trial.
JAMA 314: 1255-1263, 2015.
2) Buchholz SW, Wilbur J, Ingram D, Fogg L. Physical activity text messaging interventions
in adults: a systematic review. Worldviews Evid Based Nurs 10: 163-173, 2013.
3) Saywell N, Vandal AC, Brown P, et al. Telerehabilitation to improve outcomes for people
with stroke: study protocol for a randomised controlled trial. Trials 13:233, 2012.
4) Saywell N, Taylor D. Focus group insights assist trial design for stroke telerehabilitation
: a qualitative study. Physiother Theory Pract. 31: 160-165, 2015.
factor modification in patients with coronary heart disease: a randomized clinical trial.
JAMA 314: 1255-1263, 2015.
2) Buchholz SW, Wilbur J, Ingram D, Fogg L. Physical activity text messaging interventions
in adults: a systematic review. Worldviews Evid Based Nurs 10: 163-173, 2013.
3) Saywell N, Vandal AC, Brown P, et al. Telerehabilitation to improve outcomes for people
with stroke: study protocol for a randomised controlled trial. Trials 13:233, 2012.
4) Saywell N, Taylor D. Focus group insights assist trial design for stroke telerehabilitation
: a qualitative study. Physiother Theory Pract. 31: 160-165, 2015.
2021年05月10日掲載
