入院患者の身体活動を高めるための行動変容介入:システマティックレビュー、メタアナリシス、メタ回帰

Nicholas F Taylor, Katherine E Harding, Amy M Dennett, Samantha Febrey, Krystal Warmoth, Abi J Hall, Luke A Prendergast, Victoria A Goodwin. Behaviour change interventions to increase physical activity in hospitalised patients: a systematic review, meta-analysis and meta-regression. 2021 Jul 24;afab154.

PubMed PMID:34304267

  • No.2109_01
  • 執筆担当:
    順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科
    澤 龍一
  • 掲載:2021年10月22日

【論文の概要】

目的:入院患者の身体活動レベルに対する行動変容介入の効果を明らかにすること。
方法:入院患者の身体活動を増加させる行動変容介入のランダム化比較試験(RCT)について、システマティックレビュー、メタアナリシス、メタ回帰分析を実施した。
結果:20本のRCTが抽出された(内、6本は高バイアスリスク)。行動変容介入による身体活動レベル向上の効果は中程度のエビデンスがあった(SMD 0.34、95%CI 0.14-.55)。その他、患者の心身機能指標や入院期間の短縮について結論は得られなかった。有害事象の報告は少なかった。メタ回帰から、目標設定(SMD 0.29、95%CI 0.05-0.53)、フィードバック(バイアスリスクの高い試験を除く)(SMD 0.35、95%CI 0.11-0.60)を用いた行動変容介入が身体活動レベル向上と独立して関連していた。
結論:入院患者への行動変容介入は、身体活動レベル向上と関連していた。入院中の身体活動レベル向上による心身機能指標や入院期間短縮ついて結論は得られなかった。

【解説】

 本研究は2021年5月までに発表された、入院患者を対象とした行動変容介入を実施したランダム化比較試験(RCT)をまとめ、その身体活動レベルや患者心身機能指標の改善、入院期間短縮への効果を明らかにするために、システマティックレビュー、メタアナリシス、メタ回帰分析を実施している。本研究で抽出された20のRCTにおいて、介入方法として①目標設定 ②フィードバックが多くの研究で用いられており、②については加速度計を用いている研究が多い結果であった。
 医療技術の進歩により高齢であっても手術、リハビリテーションにより機能改善し、地域社会に復帰できることは素晴らしいことであるが、一方で入院中の障害(Hospital-acquired disability: HAD)発生が新たな課題として生じている1)。入院中の身体活動レベルを維持し、HAD発生を抑制することは高齢患者ほど重要であり、リハビリテーション専門職の個別介入以外の時間に対して行動変容介入することが不可欠である。
 一日の総歩数としては7000-7500歩を上限として、それ以上歩くことによる健康アウトカムへの効果は限定的であることがいくつかの研究で明らかになっている2),3)。そのため最終目標歩数として7000-7500歩の設定が妥当と考えるが、重要なことは、本レビューで抽出された多くの研究で実施されているように、日々の対面フィードバックにより段階的に目標歩数を修正することである。そのため、理学療法士が患者の行動変容を促すことも、今後ますます重要となると思われる。

【引用・参考文献】

1) Hirsch CH, Sommers L, Olsen A, Mullen L, Winograd CH. The natural history of
   functional morbidity in hospitalized older patients. J Am Geriatr Soc 1990
   ;38: 1296–1303.
2) I-Min Lee, Eric J Shiroma, Masamitsu Kamada, David R Bassett, Charles E Matthews,
   Julie E Buring. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality
   in Older Women. JAMA Intern Med. 2019 Aug 1;179(8):1105-1112.
3) Pedro F Saint-Maurice, Richard P Troiano, David R Bassett Jr, Barry I Graubard,
   Susan A Carlson, Eric J Shiroma, Janet E Fulton, Charles E Matthews.
   Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults.
   JAMA. 2020 Mar 24;323(12):1151-1160. doi: 10.1001/jama.2020.1382.

2021年10月22日掲載

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